南アフリカ共和国最南端の都市ケープタウンにある喜望峰から東へ３０キロ。大西洋とインド洋が衝突する海は、腕利きの船員も嘆く難所である。
ここに海の生態系の頂点に君臨するホオジロザメが生息している。映画「ジョーズ」に登場した凶暴なサメとして知られるが、ただ怖いというだけで乱獲され、個体数も激減し、絶滅の危機にあるという。
私はケージ（檻（おり））の中に入って撮影した。海水は１４度と低い。濁った海中から突然、巨大な銀色のシルエットが目の前に現れる。感情のない冷たい黒目がゆっくりとケージの中の私を見つめる。
サメの中でも格別に進化したこの生き物は、時を超えて適応力を備えた。１トンにも及ぶ流線形の巨体で、私に向かって体当たりしてくる。強い衝撃が走る。何度も体勢を立て直し、シャッターを押し続けた。